「親子で漁に出られて、幸せもんだ」
YOSHIDA Masami YOSHIDA Kouichi
(漁師)
吉田の父さんは86歳。今も現役の漁師。
漁師になって70年。ちょっとやそっとのことでは若いものには負けない。息子の孝一さんは、漁師歴40年。父親譲りの海の男だ。孝一さんは若い頃から父さんに漁のすべてを仕込まれてきた。漁師はヒラメの一本釣りには血が騒ぐ。
吉田さん親子には忘れられない出来事がある。
孝一さん20歳の1月の寒い朝のことだ。いつもと同じように沖へ出て順調に漁をしていたが、波のうねりが変化した。最初に気づいたのは、父さん。「漁やめて、陸(おか)さ戻るど」という父さんの言葉に孝一さんは従った。
港に戻るにつれ、波は高くなり、容易に港に入ることができない。必死のおもいで陸に戻った記憶は今も吉田さん親子に残っている。
「海は有難いけど、怖いもんだべさ。」と豪快に笑い飛ばす二人は、今日も親子船で漁に出る。