望遠鏡の種類と構造
The type and structure of the telescope
 
望遠鏡の発明者は?
 1608年 オランダのメガネ職人ハンス・リッペルスハイは、2枚のレンズをかざして遠くを見ると、ものが大きく見える事を発見しました。これが望遠鏡の始まりとされていますが、他にも望遠鏡を発明した人が数人いるらしいといわれます。翌1609年、望遠鏡の噂を聞いたガリレオ・ガリレイが、試行錯誤の末に望遠鏡を完成させ星に向けました。これが望遠鏡による天体観測の始まりです。ガリレオの望遠鏡は屈折式で、光がレンズの中を通るため像が滲むという欠点がありました。
 この問題を解決するために、アイザック・ニュートンは鏡の表面反射を利用した望遠鏡を開発しました。鏡の真ん中がへこんだ凹面鏡を使用した望遠鏡で、鏡の表面反射なので色の滲みがなく非常にシャープに見えました。これらは光を観測するための望遠鏡で、
光学式望遠鏡といいます。
 光ではなく電波を観測するのが
電波望遠鏡です。1932年にベル研究所のカール・ジャンスキーという技術者が、通信中にはいるノイズが気になり、いろいろ調べたところ宇宙からやって来ていることに気付きました。これをきっかけに電波天文学が始まったのです。
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望遠鏡の構造
 望遠鏡には電波望遠鏡と光学望遠鏡があります。電波望遠鏡はパラボラアンテナなどのアンテナで電磁波(テレビやラジオのような波長の長いものから、X線やガンマ線のような波長の短いものまで)を受信するもので、光学望遠鏡は電磁波の中の紫外線や可視光線、赤外線を対象としています。
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 光学望遠鏡には大きく分けて屈折式と反射式があります。屈折式は対物レンズ(凸レンズ)を通った光を接眼レンズで拡大するもの。反射式は主鏡という凹面鏡で反射した光を接眼レンズで拡大するものです。
天体望遠鏡は接眼レンズを交換して倍率を変えられるため、"○○倍の望遠鏡"とは言いません。
 ガリレオが最初に作った望遠鏡は屈折式で口径1.6cm、ニュートンが作った反射望遠鏡は口径5cmでした。
 屈折式の対物レンズは口径が大きくなるほど厚みが増し、光の透過率が落ちます。この限界が120cmと言われています。現存する屈折式望遠鏡の最大口径はヤーキス天文台の40インチ(101cm)ですが、以後これを超える大口径の屈折式は作られていません。
 反射式の場合は、鏡の表面反射なので口径が大きくなっても、厚みはそれほど増やさずにつくることができます。すばる望遠鏡の鏡は直径が8.2mもあるのに厚みはわずか20cmです。しかし、1枚の鏡で作るには限界に来ていて、最近の大口径望遠鏡は、小さな鏡を貼り合わせて巨大化する「マルチミラー方式」で作られます。現在の最大口径を誇るケック望遠鏡は口径10mありますが、直径1.8mの鏡を正六角形に切り取り36枚貼り合わせています。また、現在製作中の口径30mの望遠鏡(TMT)は正六角形の鏡を492枚貼り合わせて作ります。
特徴:前後がレンズで密封されているため揺らぎの少ない安定した像が得られる。物理的に大口径のレンズが作れない。製造コストが高い。レンズのプリズム効果より色のにじみが出る
特徴:筒が開放のため気流が乱れやすく像が不安定。コストが安く大口径の望遠鏡が作れる。鏡の表面反射のため色のにじみがなくシャープな像が得られる
 
光学式望遠鏡の種類
- - - - - - - ★ 屈折式 ★ - - - - - - -
ガリレオ式 (ガリレオ・ガリレイ作)
対物レンズに凸レンズを、接眼レンズに凹レンズを使用
凸レンズと凹レンズで色のにじみをうち消すので見やすい。正立像になる
視野が狭く倍率を高くできない
使用例:オペラグラスで使用され、倍率は2〜3倍
ケプラー式 (ヨハネス・ケプラー作)
対物レンズ、接眼レンズ共に凸レンズを使用
視野が広い。低倍率から高倍率まで使える
色のにじみが目立つ(現在では対物レンズを凹レンズと組み合わせることで色のにじみが非常に少なくなっている)。倒立像になる(プリズム等で正立像にすることは可能)
使用例:市販されている屈折望遠鏡はほとんどケプラー式で、色のにじみや収差を抑えるため、対物レンズの材料や組み合わせが工夫されている。双眼鏡はケプラー式望遠鏡を2台並べたもの
 
- - - - - - - - ★ 反射式 ★ - - - - - - - -
ニュートン式 (アイザック・ニュートン作)
放物面の凹面鏡と45度傾けた平面鏡(斜鏡)を使った望遠鏡
鏡の表面反射を使用するので屈折式のような色のにじみがでない。大きな鏡も作りやすい
横からのぞくのでなれないと使いにくい

使用例:市販されている反射望遠鏡はニュートン式が多く入手しやすい
ハーシェル式 (ウィリアム・ハーシェル作)
ニュートン式では斜鏡がじゃまになるので取ってしまった
斜鏡がないので視野が明るい
主鏡を傾けるのでゆがみがでる。最初から傾きのある鏡を作ることも可能だが製作は非常に困難。接眼部が作りにくい。像が裏返しになる
使用例:市販品はない
ニュートン・ハーシェル式 (ウィリアム・ハーシェル作)
ニュートン式とハーシェル式を合わせた構造にしたもの
斜鏡を入れて接眼部は作りやすくなった
主鏡を傾けるためゆがみは変わらない。最初から傾きのある鏡を作ることも可能だが製作は非常に困難
使用例:市販品はない
カセグレン式 (ローラン・カセグレン作)
斜鏡の替わりに双曲面の凸面鏡を使った
望遠鏡の向きとのぞく方向が同じなので扱いやすい。焦点距離が長くなるため高倍率が得やすい
逆に低倍率が得にくい。凸面鏡の製作が難しい
使用例:中型から大型まで広く使われている。主に天文台等の大型望遠鏡に使われている(しょさんべつ天文台の望遠鏡はこのタイプ) 
ドールカーカム式
形状はカセグレン式に似ているが楕円面の主境と、球面の副鏡を使った
鏡が作りやすい。惑星観測向き
周辺部の収差が大きい
使用例:市販されてはいるが少ない
リッチー・クレチアン式
カセグレン式の応用で主鏡、副鏡とも双曲面にした
鏡の研磨技術が進み製作がしやすくなった。像が平坦で収差が少ない
使用例:中口径(20〜40cm)が入手しやすい
グレゴリー式 (ジェームス・グレゴリー作)
主鏡を放物面に、副鏡に楕円面の凹面鏡を使用
正立像になる
副鏡の製作が困難。カセグレン式に比べ鏡筒が長くなる
使用例:市販品はない
ナスミス式
ニュートン式とカセグレン式を合わせたような構造
接眼レンズの位置をあまり変えずにどの方向にでも向けることが可能
鏡の数が多いので調整が面倒
使用例:天文台の大型望遠鏡で使われることが多い
 
クーデ式
ナスミス式の応用で、望遠鏡と赤道儀が一体化する。屈折式、反射式のどちらもある
接眼レンズが極軸にあるためどの方向を向けてものぞく位置は変わらない
鏡の数が多いので調整が面倒
使用例:天文台の大型望遠鏡で使われる
 
- - - - - - - - ★ 複合型(反射屈折式) ★ - - - - - - - -
屈折式や反射式はそれぞれ弱点があるため、弱点を補うために考えられた方式で、補正レンズでゆがみを修整する。カタディオプトリック式という。
シュミット・カセグレン式 (ベルンハルト・シュミット作)
シュミットはレンズの収差を取り除くために、テレビ用に特殊なレンズ(シュミットレンズまたはシュミット補正板と呼ばれる、断面が凸レンズと凹レンズを合わせたようなレンズ)を考案。後に天体望遠鏡に応用された
カセグレン式では周辺部の像が乱れるため、シュミット補正板を入れた
望遠鏡の向きとのぞく方向が同じなので扱いやすい。周辺部まできれいに見える。筒が短くコンパクト
補正レンズの製作が困難。気温の変化によっては補正レンズにゆがみが出る
使用例:10〜40cmが市販され、ニュートン式と並んで手に入りやすい。副鏡を斜鏡に換えたシュミット・ニュートン式もある
マクストフ・カセグレン式 (マクストフ作)
シュミットカセグレン式に似ているが補正レンズに凹メニスカスレンズを使用
補正レンズはシュミットレンズより作りやすい。主鏡、副鏡とも球面鏡のため製作が容易
外気温になじむまで多少時間がかかる
使用例:10〜40cmの望遠鏡は市販されている。副鏡を斜鏡に換えたマクストフ・ニュートン式もある
電波望遠鏡
野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡
電波望遠鏡(グロート・レーバー作)
お椀型のパラボラアンテナを使用。電波を受信するものなので直接天体を見ることはできない
BSやCSのアンテナ似ているが、微弱な電波を捕らえるため大きなアンテナが必要
世界中で使われているが、個人で使用している人は希。世界最大は中国の直径500m、プエルトリコの直径305mがあるが、いずれも固定式。可動式ではドイツの100mがあり、日本では野辺山の45m(通信用では臼田の64mがある)が最大
チリ、アタカマ砂漠のミリ波サブミリ波干渉計
電波干渉計
複数の電波望遠鏡で受信した電波を一つにまとめることで、その距離に相応する仮想巨大望遠鏡として、より高い精度で観測できる。原理は、電波望遠鏡の位置を数10mから数km離すことでわずかに電波が届くのに時差が生じ、電波の波形に微妙な違いが出る。この波形を整理することで高精度の情報が得られるのである。
チリに造られたアルマ望遠鏡は、66台のパラボラアンテナを組み合わせ、直径16kmの電波望遠鏡に匹敵する性能を持つ。
国内ではVERAと言う観測網があり、水沢局(岩手)、小笠原局、入来局(鹿児島)、石垣島局を結んで直径2,300kmと言う巨大干渉計として、銀河系の立体地図の作成などを行っている
FMアンテナ
FMラジオ用受信アンテナだが、このアンテナで捕らえるのは宇宙からの電波ではなく、流星である。流星そのものから電波は出ていないので、流星に反射したノイズを数えるのである。
普段受信のできない遠くのFM局から発した電波が、流星にぶつかると遠くでも短いノイズとして受信できる。このノイズの数や強さを観測することで、流星がどれだけ流れたかを知ることができる。曇りや雨でもできるので流星観測方法の一つとして利用されている。